病院から帰った夜のこと
腫瘍が悪性だったとしたらの話
病気の治療費用なら収入貯金保険等でなんとかなる。
が体外受精までの費用(約80万)は治療の都度、現金払い。東京都の助成金(満額なら30万)は妊娠確認後から申請して審査支払いまで4ヶ月くらいかかる。
病気の治療と平行して体外受精の支払いをして行くには我々にとっては現状無理なのではなかろうか。
なるべく自分達で工面しつつ
もしもの時はお互いの親族に助けを求められるものか確認をしておかなければと連絡しておくことにした。
一方で私としては、抗ガン剤治療の後に子宮が閉経したままなのか機能が戻るのかはわからないので、まずは腫瘍の治療を優先して治療が終わって子宮の機能が戻っていたら不妊治療をはじめる考えも持っていた。
私は子供も欲しいけど腫瘍の治療を優先したかった。
体外受精に時間と治療費を使ってしまい、腫瘍の治療に遅れやできないことがでてくるのは避けたい。妻には長く生きてもらいたい。
私の母親は癌で49歳の若さで他界している。
妻まで早く亡くすなんて耐えられるものじゃない。
妻にも自分の考えを伝えてみた。
妻は考え方が違っていた。
『子供を作る目標があるから前向きに治療に向かえる。
抗ガン剤治療で弱った卵巣から卵子が取り出せる確証もない。腫瘍の治療だけを優先するならそれは子供を諦めると言われているのと同じ。
それならごめん。頑張れない。
何も残してあげられないでただ生きているなんて無理。先に死んであなた1人だけで生きていかせたくない。子供も産めない。長く一緒に生きてもあげられない。何もできない人みたいで嫌です。お願いします。
頑張るから体外受精も進めさせてください。』
何も言えなくなった。
感情では「そうだね。頑張ろう!」
と言いたかった。
頑張れないと言われてしまったら自分が合わせるしかない。
けど今のところ現実問題気持ちだけでは進められない。
まずは病院からの紹介状をもらって話を聞くこと、お互い親に相談してみようと言うしかなかった。
自分達にとって大事なことと現実がずれる