国立ガン研究センターへ
妻は前日の夜はずっとメソメソしていた。
再来受付機の予定表を見ると腫瘍内科の予定の後に入っていた泌尿器科の予定がなくなって代わりに採血になっていた。
泌尿器科は手術する場合に観ると言われていたはずなので、やはり抗がん剤治療からはじめる流れと予想できてしまった。
採血の結果を待つので1時間待ちだった。
午後の診察だったので診察室前の待ち合いがガラガラで静かなのが余計に落ち着けなくて
「やだな。」
「やだね。」
しか二人で言わない状態になった。
ついに診察室に呼ばれて話をきく
「先日のPET-CTの結果はこちらです。」
観ると腫瘍部分は緑色に光っているけど他の部分に転移は無いようだった。
腫瘍の大きさはPET-CTの結果13cmとわかった。でかい….
「それと先日の針生検で3箇所で腫瘍の組織を採取したわけなんですが...
いわゆる悪性の腫瘍、肉腫やガンの細胞は検出しませんでした。」
え?
「リンパ球や形質細胞といった血液の細胞が増殖した病変でした。ただ悪性リンパ腫のような血液のガンというものには否定的です。」
ガンじゃないんですか?
「刺して取り出した位置にはなかっただけでもっと深くはガンだったということはありますけど、ウチの研究員も優秀ですし「腫瘍の組織は採れたようだ」と言っていますからもう一度やる必要はないと思います。」
何なのでしょう?
「疑いとしてはキャッスルマン病が疑われますが血液内科の専門医がいないのでウチでは正確に診断できないですね。これもとても珍しい病気ではあります。」
キャッスルマン病??
どうしたらいいのですか?
「紹介状を書きますのでまずは地元の病院で腫瘍を切り取ってもらってそちらで詳しく調べてもらってください。ウチはガン優先なのでガンじゃない病気は診れないんですね。調べてもらった結果やっぱりガンだった場合はたぶんまた戻ってくることになるとは思いますが可能性としては大きくないと思います。ではデータをやいておきますので帰りに受け取ってください。」
え?終わりなのですか?
「そうですね。ガンではないですので。
こういう腫瘍は周りに癒着してないと思うのでとれると思いますよ。紹介状も送っておきますから早めに地元の病院予約をとって大丈夫ですよ。お大事に」
あ、ありがとうございました。
とりあえずわけがわからないまま地元の病院に予約をとって来週行くことになった。
告知がなかったことがようやく理解できた。
生きられる?ガンじゃない?
子供も作れる?本当に良かった。
帰りの電車の中2人ともスマホでキャッスルマン病を検索してみた。
「2017年にようやく難病指定される」
....
コレの方が希な病気っぽいことが書いてある
結局謎の後腹膜腫瘍というスタートに戻ってしまった。
肉腫とは違った厄介さはあれど肉腫のような増殖の強さは少なそうな気がする。
これからどうなるのかはわからないけど
良かったと言い切れないけど良かったのか?
キャッスルマン病についてまた勉強しなくてはいけない。